2018年12月に長崎大学が富岡町の住民の皆さんを対象に行ったアンケート調査の結果、約4割の方が、富岡町で生活することによる放射線被ばくの健康影響に不安があると答えていました。
広報とみおか11月号の「なるほど!放射線・放射能コラム」では、1ミリシーベルトの意味について、お伝えしました。
(→[コラム]国際放射線防護委員会の勧告する1ミリシーベルト)
放射線被ばくの影響は、「確定的影響」と「確率的影響」の2つに分けられます。「確定的影響」とは、ある一定の線量 (これを「しきい値」、といいます)を超えるとみられる影響のことで、多くの急性症状が当てはまります。
例えば、250ミリシーベルト以上を一度に被ばくすると、男性の精子の減少が一過性に見られますし、500ミリシーベルト以上を一度に被ばくすると骨の中にある骨髄に障害が起き、白血球や赤血球、血小板が減少するため、感染症が起きやすくなったり貧血になったり、出血が止まらなくなったりします。また、1000ミリグレイ※以上の放射線を一度に被ばくすると、吐き気や全身倦怠感といった全身症状が出ます。このように、非常に高い線量の放射線を一度に被ばくした場合にはこれらの症状が出現しますが、一方で、しきい値以下の被ばく線量ではこれらの症状は起こりません。福島第一原発事故直後から現在に至るまで、県内の皆さんは、確定的影響が出るような線量を受けていないことがわかっています。次回は、「確率的影響」について解説します。
※グレイ・・・放射線の吸収線量。セシウム137が出す放射線 (ベータ線、ガンマ線)の場合は、1グレイは1シーベルトとなります。
(広報とみおか 令和2年1月号より)
高村 昇
長崎大学原爆後障害医療研究所 国際保健医療福祉学研究分野・教授
経歴:
1993年3月:
長崎大学医学部卒業
1997年3月:
長崎大学医学部大学院医学研究科卒業
1997年6月-2001年10月:
長崎大学医学部原爆後障害医療研究施設
国際放射線保健部門助手
1999年6月-2000年7月:
世界保健機関本部(スイス・ジュネーブ)
技術アドバイザー (上職のまま)
2001年11月-2003年2月:
長崎大学医学部社会医学講座講師
2003年3月-:
長崎大学医歯薬学総合研究科公衆衛生学分野准教授
2008年4月-:
現職
2010年1月-2010年9月:
世界保健機関本部(WHO)
テクニカルオフィサー(WHO神戸センター、上職のまま)