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なるほど!放射線・放射能コラム

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[コラム]汚染水に含まれるトリチウムの性質と健康への影響

放射線基礎知識放射線被ばく

最近、皆さまから「福島第一原子力発電所構内に貯蔵されている汚染水に含まれるトリチウムとは何か?私たちの健康にどのような影響があるのか?」という質問をいただきました。

トリチウムは別名「三重水素(さんじゅうすいそ)」と呼ばれ、環境中ではトリチウム水という水のような物質として存在しています。トリチウムの物理学的半減期は約12年で、低いエネルギーのベータ線という放射線を出します。ベータ線は容易に遮蔽(しゃへい)されるため、人体への外部被ばくの心配はあまりありません。一方、トリチウムが体内に大量に取り込まれた場合には、内部被ばくの可能性があります。

しかし、トリチウムはその性質上、特定の臓器に蓄積することはありません。水のように全身に分布し、約10日で取り込まれた量の半分が自然に排せつされます。仮に1リットル当たり5000ベクレルのトリチウム水を1リットル、1年間毎日飲み続けた場合、内部被ばく線量は0.09ミリシーベルト(90マイクロシーベルト)程度となります。これは胸のレントゲン写真を1枚撮影した程度の被ばく量であり、健康への影響はありません。

(広報とみおか 令和3年3月号より)

解説者紹介

高村 昇
長崎大学原爆後障害医療研究所 国際保健医療福祉学研究分野・教授

経歴:
1993年3月:
長崎大学医学部卒業
1997年3月:
長崎大学医学部大学院医学研究科卒業
1997年6月-2001年10月:
長崎大学医学部原爆後障害医療研究施設
国際放射線保健部門助手
1999年6月-2000年7月:
世界保健機関本部(スイス・ジュネーブ)
技術アドバイザー (上職のまま)
2001年11月-2003年2月:
長崎大学医学部社会医学講座講師
2003年3月-:
長崎大学医歯薬学総合研究科公衆衛生学分野准教授
2008年4月-:
現職
2010年1月-2010年9月:
世界保健機関本部(WHO)
テクニカルオフィサー(WHO神戸センター、上職のまま)