追加被ばく線量とは、福島第一原子力発電所事故により放出された放射性物質による被ばく線量を意味します。自然界には放射線が元々存在し、私たちは、事故とは関係なく大地や宇宙からの放射線により被ばくしていますので、その線量と区別するために「(事故による)追加被ばく線量」と呼びます。
年間20mSvについては、事故発生時の避難と解除に関する線量です。
政府は、福島第一原子力発電所事故において、国際放射線防護委員会(ICRP)の緊急時被ばく状況※1における放射線防護の参考レベル※2を考慮し、年間20mSvに達する恐れのある地域に避難指示を行いました。
その後、年間の被ばく線量が20mSv以下となることが確実であることが確認された地域について、現存被ばく状況※3に移行したと判断し、「避難指示解除準備区域」としました。この区域では、日常生活に必須なインフラや生活関連サービスが概ね復旧し、子どもの生活環境を中心とする除染作業が十分に進捗した段階で、県、市町村、住民との十分や協議を踏まえ、避難指示を解除することとしています。
年間1mSvは、現存被ばくにおける長期的に目指す参考レベルです。この参考レベルは、長期間の着実かつ継続的な放射線防護によって段階的に被ばく線量を低減させることを目指しています。
なお、これらの参考レベルは、放射線防護措置を効果的に進めていくための目安であり、被ばくの限度を示すものではありません。また、安全と危険の境界を表す目安でもありません。
※1…事故や核テロなどの緊急の対策が必要な状況。
※2…経済的・社会的要因を考慮し、被ばく線量を合理的に達成できる限り低くする「最適化」の原則に基づいて措置を講じるための目安。緊急時被ばく状況においては年間20~100mSv。現存被ばく状況においては長期目標1mSv。
※3…事故後の長期にわたる回復・復旧の時期の被ばく状況等
〔参考〕100mSv以下の放射線による健康影響について
●「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」、「国際放射線防護委員会(ICRP)」の報告書や勧告等によると、100mSv以下の被ばくでは、あるしきい値を超えて被ばくした際に発生する健康影響(確定的影響)は確認されていません。また、被ばく線量の増加に伴って発症率が増加する健康影響(確率的影響)については、他の要因による発がんの影響に隠れてしまうため、放射線による発がんのリスクの明らかな増加を証明するのは難しいとされています。
●この100mSv以下の被ばくに関する健康影響の評価は、短時間での被ばくによる影響の評価に基づくもので、長期にわたる被ばくの影響は、積算線量が同じ100mSvの被ばくの場合、短時間による被ばくより小さいと推定されています。
●また、子どもや胎児への影響についても、100mSv以下の被ばくでは、年齢層の違いによる発がんリスク等の差は確認されていません。