放射性セシウムが母乳中に濃縮されることはなく、母乳に移行する量も一割程度以下であることから、乳児への健康影響は考えにくいといえます。
福島第一原発事故後の2011年4月に、一部の地域で母乳中から極めて微量の放射性ヨウ素や放射性セシウムが検出されたことが明らかになり、授乳中のお母さんから、母乳によって子どもたちに放射線の影響が出るのではないかと心配する声がありました。半減期の短い放射性ヨウ素は現在環境中に存在していませんが、半減期が比較的長い放射性セシウムは現在も環境中に存在しており、放射性セシウムが含まれる食材をお母さんが摂取した場合、約一割程度以下が母乳に移行する可能性はあります。ただ、放射性セシウムが母乳中に濃縮されることはありません。さらに事故直後から現在まで、食品中の放射性セシウムについては、モニタリングによる食品管理が継続して行われており、お母さん方が基準値を超える放射性セシウムが含まれる食べ物や水を摂取する機会は極めて限られています。
また、もし摂取した食品中に微量の放射性セシウムが含まれていたとしても、上記のように母乳に移行する量は一割程度以下であることから、乳児への健康影響は考えにくいといえます。母乳を与えることは、子どもさんの健やかな成長にとってとても重要な役割を果たしていますし、また母子のコミュニケーションとしても大切ですから、ぜひ普段通りの生活を心がけてもらえればと思います。
(広報とみおか 令和元年7月号より)
高村 昇
長崎大学原爆後障害医療研究所 国際保健医療福祉学研究分野・教授
経歴:
1993年3月:
長崎大学医学部卒業
1997年3月:
長崎大学医学部大学院医学研究科卒業
1997年6月-2001年10月:
長崎大学医学部原爆後障害医療研究施設
国際放射線保健部門助手
1999年6月-2000年7月:
世界保健機関本部(スイス・ジュネーブ)
技術アドバイザー (上職のまま)
2001年11月-2003年2月:
長崎大学医学部社会医学講座講師
2003年3月-:
長崎大学医歯薬学総合研究科公衆衛生学分野准教授
2008年4月-:
現職
2010年1月-2010年9月:
世界保健機関本部(WHO)
テクニカルオフィサー(WHO神戸センター、上職のまま)