昨年度、長崎大学が富岡町民の皆さんを対象に行ったアンケート調査で、約7割の方が現在定期的に通院していると回答されました。その中には、レントゲン検査や放射線治療など放射線を利用した医療を受けたことがある方もいらっしゃると思います。
震災以降、放射線被ばくによる健康影響が取り上げられ、医療現場で用いられている放射線に疑問をお持ちになった方もおられるかもしれません。放射線は、病気の診断や治療のために医療分野で多く利用されており、欠かすことができないものです。医療機関で診断や治療のために放射線を被ばくすることを「医療被ばく」といいます。
例えば、胸部エックス線写真を1枚撮ると、50マイクロシーベルト程度の被ばくをします。また、がんの治療の場合は、極めて高い線量の放射線をがんのある部位のみに集中して何回かに分割して照射します。医療被ばくは、被ばくする個人に直接の利益をもたらすことを意図しており、線量の上限は決められていません。つまり、放射線を被ばくすることによるリスクよりも、診断や治療によって、病気を早期に発見し、治療するというメリットの方が大きい場合は、医療被ばくによる線量の上限は定めないということです。しかし、だからといってやみくもに放射線を用いた検査や治療を実施していいということわけではありません。
もし、医療被ばくに不安を感じた場合には、医師や看護師に検査や治療の目的など、十分に説明を受けられることをおすすめします。
(広報とみおか 平成31年3月号より)
高村 昇
長崎大学原爆後障害医療研究所 国際保健医療福祉学研究分野・教授
経歴:
1993年3月:
長崎大学医学部卒業
1997年3月:
長崎大学医学部大学院医学研究科卒業
1997年6月-2001年10月:
長崎大学医学部原爆後障害医療研究施設
国際放射線保健部門助手
1999年6月-2000年7月:
世界保健機関本部(スイス・ジュネーブ)
技術アドバイザー (上職のまま)
2001年11月-2003年2月:
長崎大学医学部社会医学講座講師
2003年3月-:
長崎大学医歯薬学総合研究科公衆衛生学分野准教授
2008年4月-:
現職
2010年1月-2010年9月:
世界保健機関本部(WHO)
テクニカルオフィサー(WHO神戸センター、上職のまま)