富岡町での暮らしを再開するにあたり、放射線被ばくと健康影響について気になっている方もいらっしゃるかと思います。放射線被ばくには「外部被ばく」と「内部被ばく」があります。外部被ばくは外からきた放射線によって被ばくすることで、皆さんも受けたことがある胸のレントゲン写真などは外部被ばく、ということになります。
帰町に先立って町内では除染が行われましたが、これは家の屋根、壁や庭の土、樹木などに付着した放射性セシウムから出される放射線による外部被ばくをなるべく低くするためです。しかしながら除染の範囲外にある樹木に付着している放射性セシウムなどから出される放射線によってわずかに被ばくする可能性もあります。これまでの準備宿泊における個人被ばく線量評価の結果では、ほとんどの方の追加被ばく線量は極めて限られています。ごく一部で年間3ミリシーベルト程度に相当する線量の方がいらっしゃいますが、その程度の被ばくで健康影響が起こることはありません。
一方で内部被ばくは、放射性物質を含む食物や水などを摂取したり空気を吸い込んだりしたことで、体の中から出される放射線によって被ばくすることです。現在福島では食品や水における放射性セシウムの基準値が定められ、それを上回るものについては摂取制限、流通制限がかけられているため、流通している食品による内部被ばくのリスクはまずないと考えられます。一方、これまでの調査で放射性セシウムは野生のキノコや山菜などに比較的濃縮しやすいことがわかってきています。特にコウタケなどは放射性セシウムが高頻度に検出されていますので、野生のキノコや山菜などを食べる際、気になる方は役場に相談の上、放射性セシウム濃度を測ってみるとよいでしょう。ただし、基準値を超えるキノコや山菜を数回食べたとしても、内部被ばく線量は極めて限られており、それによって健康影響がおこることはありません。
高村 昇
長崎大学原爆後障害医療研究所 国際保健医療福祉学研究分野・教授
経歴:
1993年3月:
長崎大学医学部卒業
1997年3月:
長崎大学医学部大学院医学研究科卒業
1997年6月-2001年10月:
長崎大学医学部原爆後障害医療研究施設
国際放射線保健部門助手
1999年6月-2000年7月:
世界保健機関本部(スイス・ジュネーブ)
技術アドバイザー(上職のまま)
2001年11月-2003年2月:
長崎大学医学部社会医学講座講師
2003年3月-:
長崎大学医歯薬学総合研究科公衆衛生学分野准教授
2008年4月-:
現職
2010年1月-2010年9月:
世界保健機関本部(WHO)
テクニカルオフィサー (WHO神戸センター、上職のまま)